法華経勧持品第13の二十行の偈(詩の形の経文)のなかには、末法に法華経を弘通する者に3種類の強い迫害者、すなわち「三類の強敵」が出現することが示されています。
その強敵のそれぞれは、第1に俗衆増上慢、第2に道門増上慢、第3に僭聖増上慢と名づけられています。増上慢とは、種々の慢心を起こし、自分は他の人よりも優れていると思う人をいいます。
第1の俗衆増上慢は、法華経の行者を迫害する、仏法に無智な人々をいいます。法華経の行者に対して、悪口罵詈(悪口や罵ること)などを浴びせ、刀や杖で危害を加えることもあると説かれています。
第2の道門増上慢は、法華経の行者を迫害する比丘(僧侶)を指します。邪智で心が曲がっているために、真実の仏法を究めていないのに、自分の考えに執着し、自身が優れていると思い、正法を持った人を迫害してくるのです。
第3の僭聖増上慢は、人々から聖者のように仰がれている高僧で、ふだんは世間から離れたところに住み、自分の利益のみを貪り、悪心を抱いて、法華経の行者を陥れようとします。
その手口は、国王や大臣に向かって、法華経の行者を邪見の者であるなどと讒言(ウソの告げ口)し、権力者を動かして、弾圧を加えるように仕向けるのです。
心の中が悪に支配された様を、経文に「悪鬼入其身(悪鬼は其の身に入って)」(法華経419㌻)と説かれています。〝悪鬼が身に入った〟これらの迫害者たちによって、末法に法華経を持つ人は、何回も所を追われたりすると説かれています。
このうち、第1と第2は耐え忍ぶことができても、第3の僭聖増上慢は、最も悪質であるといわれています。なぜなら、僭聖増上慢の正体は、なかなか見破り難いからです。
この三類の強敵は、末法に法華経を弘通する時、それを妨げようとして、必ず現れてくるものです。日蓮大聖人は、現実に、この三類の強敵を呼び起こしたことをもって、御自身が末法の法華経の行者であることの証明とされたのです。